【パラリンピック】選手村で接触事故した自動運転バスのレベルを考えてみた
こんにちは、大久保です。
パラリンピックの選手村で自動運転バスが接触事故を起こした報道があったようです。
情報メディア”Bloomberg”によると
トヨタ自動車は27日、東京パラリンピックの選手村(東京都中央区)で同社が提供する自動運転バス「eパレット」が接触事故を起こしたと発表した。
同社の発表によると、26日午後2時頃に横断歩道を渡っていた視覚障がいのある歩行者にeパレットが接触した。朝日新聞は警視庁関係者を情報源に、eパレットと接触した柔道男子81キロ級の北薗新光選手は頭と両足を打って約2週間のけがを負っており、28日の試合を欠場すると報じた。
トヨタ自動運転バスが接触事故、パラリンピック選手村でー社長が謝罪 - Bloomberg より引用
自動運転技術の発展が期待されるなか、残念な事件だなと思います。
そもそもこの自動運転はどのレベルだったのかを調べてまとめてみました。
自動運転バス「eパレット」とは?
トヨタ自動車の広報資料によると、
SAE※4レベル4相当の低速自動運転を実現した電動バスで第46回東京モーターショー2019トヨタブースに出展されたようです。
内装がかっこいい感じです。
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/29933339.htmlより引用
主要諸元
主要諸元は次のとおり。
サイズ感は同社のトヨタクラウンより少し大きめのサイズで、
高さはトヨタクラウンをちょうど二階建てにしたような感じです。
eパレットはホイルベースがかなり長いですが、
電動車であるためタイヤが独立して稼働すると思われるので
大型トラックのよう旋回時に大きく前に突っ込んでってことはなさそうですね。
主要諸元
車種 |
eパレット |
トヨタクラウン |
全長/全幅/全高/ホイールベース |
5,255/2,065/2,760/4,000 mm |
4,910/1,800/1,455/2,920 mm |
乗員 |
20名(オペレーター1名含む) 車いすの場合 4名+立ち乗り7名 |
5名 |
航続距離 |
150km程度 |
参考値) 電燃料タンク:66L JC08モード:18km/L |
最高速 |
19km/h |
300km/L程度 |
https://toyota.jp/pages/contents/crown/011_p_001/pdf/spec/crown_spec_201806.pdf
第46回東京モーターショー2019トヨタブース出展時の説明
東京モーターショーでの説明は次のとおり
周囲や乗員の安全に配慮した低速自動運転
- トヨタの車両制御プラットフォームに専用開発の自動運転システム(自動運転制御ハードウェアおよびソフトウェア、カメラやLiDARなどのセンサー)を搭載し、高精度3Dマップと運行管理による低速自動運転を実現(SAE※4レベル4相当)。
SAEレベル4とは?
SAE(Society of Automotive Engineers)は、
モビリティ専門家を会員とする米国の非営利団体です。
自動運転レベルは0~5までの6段階に分けられており、
各運転レベルの定義がなされています。
国土交通省もこのSAEの基準に則っているようで、次の資料によると
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
レベル4の基準は次のとおりです。
レベル4の基準
○特定条件下における完全自動運転 特定条件下においてシステムが全ての運転 タスクを実施
限定地域での無人自動運転移 動サービス(2020年まで)
こちらの企業ページにはより詳細定義を書かれています。
https://www.zmp.co.jp/knowledge/ad_top/info/level
自動運転レベル4とは
自動運転レベル4では、特定のエリアにおいてシステムが周辺の環境を認識して走行を行います。そのため、ドライバーは運転操作から解放されます。
自動運転レベル4走行時にドライバーに求められること
上記で説明したように、自動運転レベル4以上の状態では、自動運転機能が実行されている状態ではドライバーの運転操作は必要ありません。
自動運転レベル3との違いは、自動運転レベル4では、限定された場所や条件ではシステムが運転を行うためドライバーはただ乗車していればよい状態になります。
レベル3の状態ではシステムが自動運転走行を継続できない場合に、ドライバーへ運転移譲を求め、それを受けてドライバーが走行を引き継ぎする必要がないため、自動運転中の過ごし方に大きな違いが生まれてくると考えられます。
この説明の読む限り、公道走行をしているeパレットはSAEレベル4と言えないような気がします。
実際はSAEレベル3だったかもしれない
トヨタ自動車さんの資料によるとレベル4”相当”と書かれているので、
パラリンピックの選手村会場は、想定よりも自動運転をするには適さなかったのかなと思います。
実際、2名体制でのオペレーターの乗車があったようなので
公道走行にはオペレーション介入が必要なレベル3に落としていた
可能性はあるのかもなと思いました。
SAEレベル3とは?
自動運転レベル3とは自動運転レベル3では、ドライバーは運転操作から解放されます。
自動運転レベル3機能で車両走行中には、コンピュータが車両の操作を行います。
自動運転レベル3走行時にドライバーに求められること
自動運転レベル3以上の状態では、自動運転機能が実行されている状態ではドライバーの運転操作は必要ありません。
しかし、自動運転レベル3では、システムが自動運転走行を継続できない場合に、ドライバーへ運転移譲を求め、それを受けてドライバーが走行を引き継ぎ運転をする必要があります。
そのため、レベル3走行中、運転者は運転以外の作業が可能かもしれませんが、運転移譲時には走行できなければならないため、運転者が引き継げる状態なのかといった運転者の状態監視やシステム引継ぎまでの移行期間の確保などが重要になると思います。
人的介入が必要だとすると、接触事故のとき誰が操作していたのか?
もっというと『車両のコントロール権は誰が持っていたのか?』ということが
今後議論になってくるのかなと思います。
以上、
事故の原因が解明されてより良いものができることを期待したいと思います。
大久保 建佑